第 16 回 障がい者スポーツ指導者全国研修会が令和3年12月11日(土)・12日(日)と二日間にわたり開催されました。場所は兵庫県神戸市にあるしあわせの村という施設で開催されました。今回はウェブ配信と現地での開催という二重開催となり、多くの方が参加、視聴されました。
しあわせの村の施設は本当に大きくて敷地も広大な敷地でした。富山県ではちょっと考えられないようなスケールの福祉施設で、大変充実した施設に羨ましく思いました。


さて、1日目の12月11日(土)は基調講演、シンポジウムがあり皆様参加された後、6つの分科会があり、聴講者が希望された分科会に分かれて講義を受けます。
基調講演とシンポジウムの内容は以下の通りです。東京パラリンピックを終え、次の目標について日本パラスポーツ協会が目指す事について語られました。パラスポーツ指導者もこれからの時代を新しい視点から指導法や協議会等の運営方法など変えていかなければならない事を考えさせられる内容でした。
[基調講演]
テーマ:パラスポーツの世界から地域共生社会を考える
パラリンピック後のパラスポーツの展望及び障がい者スポーツ指導者に求める取り組みについて、お話しいただきました。藤田氏の近著である「障害者スポーツの世界から地域共生社会を考える(療育援助)」から指導者が地域共生社会に貢献できる具体的なご提案をいただき、また、パラリンピックの盛り上がりを活かした指導者の活動を考察しました。
[シンポジウム]
課題提案:『JPSA 2030 年ビジョン』に向けて指導者に求めること
新たな JPSA のビジョンの概要、指導者に求める行動指針をご説明いただきました。個々の指導者のみならず、各 ブロックの役割、都道府県・市の障がい者スポーツ指導者協議会及び、障がい者スポーツ協会との連携についての課題をお示しいただきました。
シンポジウム:~指導者協議会各事業部会長からの報告(活動の概要と今後に向けて)~
障がい者スポーツ指導者協議会においての各事業部会の目的、今までの活動内容をご説明しました。藤田氏・三上氏からの提言を受け、今後の各事業部会の活動方針や具体的な活動計画をお示ししました。参加者からのご質問、ご要望を各事業部長からご説明されました。
さてその後はいよいよ各分科会にて講義が始まりました。
分科会は6つに分かれており、それぞれ特色のある講義です。中には資格取得して年数の浅い方向けに実際にパラスポーツを体験するという分科会があったり、介護の要支援手前の方向けのチェアエクササイズの演習、車いす利用者に対するレクリエーションの考案方法や実施する際の注意点など高齢者施設や福祉施設などで働いている方にも仕事に応用できそうな分科会や、スポーツメンタルトレーニングについての専門的な講義もあり、どれを選ぶかとても迷いますね!11日(土)と12日(日)は分科会は同じ内容ですので、2日間で2つの分科会に参加できます。
以下6つの分科会の内容を簡単に紹介します。
<第1分科会>
「車いす使用者のレクリエーション(集団における楽しみの活動を通じて、心地よい時間を共有する生きがいづくりをめざして)」
車いすのレクリエーションについて、車いすのことを知る、車いすを利用される人を理解しました。身体・脳・心の健康に良い影響を与えるレクリエーショナルプログラムを進めるにあたって、指導者に求められるスタンスを考えました。福祉・スポーツレクリエーションの現状や課題、その効果について。車いすのレクリエーションの種類、方法、対象者に応じて、反応や表情、環境などを考慮し、プログラムの立案を考えるキャリアアップ、ス キルアップをめざしました。
<第2分科会>
「知的障がい・発達障がいのある子どもの特性とスポーツ指導場面における支援のあり方」
知的障がいや発達障がいのある子どもたちは、身体機能上の障がいがなくても、ぎこちなさや不器用さを併せ 持つことが少なくありません。そのような子どもたちの特性についてお話しするとともに、具体的なスポーツの 指導場面において、どのような支援の方法が適切であるか事例を通して、皆さんと一緒に考えていきました。
<第3分科会>
「スポーツメンタルトレーニングの基礎」
競技場面で実力を発揮するためには、技術面や体力面などと同様に、心理面の強化も重要となります。本分科会では、「なぜ心理面の強化が必要なのか」、「スポーツメンタルトレーニング(SMT)とは何か」、「どのようなSMT技法があるのか」といった基礎的な内容を学びました。また、各選手の障がい特性を考慮したコミュニケーション方法を再確認し、SMT 技法が障がい者スポーツの指導現場にどう活かせるか、皆さんと一緒に考えていきました。
<第4分科会>
「高齢者のフレイル予防に役立つ運動プログラム~チェアエクササイズ®~」
チェアエクササイズ®は、イスを有効に使った科学的根拠のあるプログラムで高齢者・低体力者にすすめられる運動です。本分科会では、指導者や地域リーダーが地域で取り組める要素をピックアップして、高齢者の総合的な運動機能改善を目的としたチェアエクササイズ®を講義や実技・演習を通して取り組んでいきました。
<第5分科会>
「指導員の活動を始めよう(ローンボウルズ体験)」
「障がい者スポーツ指導員資格を取ったけれど活動の始め方がわからない」「まだ障がいのある方と接する機会が少なくて不安がある」、そんな指導員の声が多く聞かれます。まず障がいのある方と一緒にスポーツを楽しんでみませんか? 本分科会では、「兵庫県障害者ローンボウルズ連盟」に所属する方たちと一緒にローンボウルズの楽しさに触れながら、サポートの仕方や指導法について学びました。
<第6分科会>
「コロナ禍における指導者の活動実態と行動を考える ~府県障害者スポーツ協会主導型から自立自主活動への行動変容~」
コロナ禍におけるパラスポーツの活動は、自粛・延期・中止のなかで活動の有無や内容について地域それぞれで異なります。その実態状況を明示し、振り返りと検証を行うことが知的(情報)財産となり、今後の行動計画を再考する契機となります。また、これまでの会員(指導者)の活動は府・県・市町や障がい者スポーツ協会などが提示する大会行事などへの「参加型」が主であったことは否めません。この現状から「活動を創出」するという将来像を考えることが急務となります。
私は第5分科会の「指導員の活動を始めよう(ローンボウルズ体験)」を取材させていただきました。講義中の模様については控えますが、ローンボウルズについて簡単にご紹介したいと思います。
ローンボウルズ競技について知らなかったのですが、イギリス発祥のユニバーサルスポーツ(性差、老若男女、障がいの区別なくみんなが楽しめるスポーツ)だそうです。
ローンボウルズ専用競技場 広くて綺麗な競技場です!
しあわせの村には専用のローンボウルズ競技場が屋外に2面あります。関西には40名ほどローンボウルズの選手がおられ、お互いに切磋琢磨しておられるそうです。
競技方法はボッチャとカーリングを足したような競技で、白いジャックボールに向かって自ボールを投げて、一番近い人が勝利、というルールです。

球がちょっと変わっていて、偏芯球と言って球がまっすぐに転がらないボールを使用します。右か左にカーブしていくので、カーブすることを想定して投げなければいけません。
1人4球が持ち球です 偏芯球というボールです
これがなかなか難しく、速くボールを転がすとカーブの曲がりは少なく、遅くボールを転がすとカーブの上がりは大きくなります。このような特性を活かして、邪魔なボールを避けてジャックボールに近づけたりと戦略的にカーブの曲がりを利用するのが勝利のコツだそうです。
ボールを拾う器具です。 こちらはボール把持器です。 このようにボールを挟みます
補助器具も充実しており、車いすに乗ったままボールが拾える器具だったり、手の巧緻障がいや筋力低下がある人でもボールが掴めるようなマジックハンドのようなものもあり、どのような方でもプレイできるような補助器具が開発されているということです。

また、室内でも楽しむことができるように室内用マットがあり、さらに距離を半分にしたハーフマットなどもあり、どのような方でも、場所でもできるような工夫がなされていました。選手人口は関西で多く、西日本が中心になっているとのことでした。全国でもローンボウルズの魅力を知ってもらいたいという思いから、初級の指導員向けに今回の分科会で講義をしましたとお話されていました。
障がいの度合いや住んでいる場所によっても参加できるパラスポーツが限られていたりしますが、指導員も多くのパラスポーツを知る事によって人に紹介できる種目が増えることは良いことですね!
全国研修会は毎年行われております。ブロックごとに持ち回りで開催するのですが、2022年度は北信越ブロックが担当し、開催県は福井県です!富山県からはとても近いので指導員のスキルアップにぜひご参加を検討されてはいかがでしょうか?多くの分科会があり、指導員だけでなく、福祉関係や介護関係の職種の方には仕事のスキルアップに繋がる分科会もあると思います。とても楽しみですね!
以上、第16回全国研修会の報告でした。